・概要 LeCroy FERA および FERA bus の持つ高速性能を最大限に生かす 為、CAMAC アクセスおよびイベント毎のソフトウェア処理を一切 廃したデータ収集システムを作成しました。ただし、出来るだけ 少ない資源と労力の投資で実現できるシンプルなシステムを目指 し、以下のような構成を採っています。 - CES HSM8170 トリプルポートメモリ (7 台まで) - VME スケーラ - Bit3 617 または 618 VME/PCI インターフェース - Linux パソコン これ以外に不感時間のブロッキングの為の Logic Unit や Gate Generator 等が必要ですが、VME の Output Register 等は必要 有りません。 FERA からのイベントデータは FERA bus を通して HSM のメモリ にバッファされますが、LeCroy 4302 メモリモジュールを用いた システムと異なるのは、イベント毎にソフトウェア処理を施さず にバッファに貯め続け、適当なブロック (本システムのデフォル トでは 64 kB) が一杯になった時点で初めてソフトウェア処理を 行い (CAMAC ではなく) VME bus を通して高速転送を行う点です。 転送の際にもトリプルポートメモリの特性を生かし、FERA bus からのデータ転送と平行して、背後から VME の DMA 転送を行う 事により、不感時間の増大を防いでいます。因に、DMA の最高転 送速度は実測で 7.4 MB/sec が得られており、充分に高速なスト レージを用いれば、FERA の持つ固有の不感時間がデータ収集の 律速となるはずです。 HSM には、イベントデータがブロックの切れ目に跨がらないよう にする工夫が施されており、これを積極的に用いてブロックの末 尾にスケーラを付け加えるようにしています。つまり、これまで 理研で用いられて来た方法と同じですが、ブロック毎にイベント データとスケーラの整合性を採る (いずれかが怪しいブロックが 有っても、その 1 ブロックだけを捨てれば他に影響が無い) よ うにしています (ただし、複数の HSM を使う場合はブロック単 位の整合性は保証されません)。 また、ネットワーク上の任意のマシンの持つストレージへのデー タの書き込み、およびネット上の任意のマシンからのオンライン 解析を支援しており、専用のサーバー (デーモン) は必要有りま せん。ストレージについては、ディスクだけでなくテープデバイ スも強く意識しており、メディアの書込み属性や交換を (ネット ワーク越しに) チェックし、また任意の RUN の切れ目でメディ アを強制排出しても EOV が正しく書かれるようになっています。 オンライン解析は複数個が使用可能で互いに干渉しません (解析 速度が充分速ければ、各々が 100% のデータを取得可能です)。 また、解析率を個別に計算するサービスが提供されています。 システム全体の制御、データ取得状況のモニター、および関連す る CAMAC デバイスの制御等は、Tcl/Tk を用いた GUI なものが 用意されています。ユーザーによる開発を支援するライブラリも、 C や Fortran だけでなく、Tcl/Tk の動的リンクライブラリが提 供されています。 VME/PCI インターフェース (Bit3 617/618) のデバイスドライバ は、NIKHEF の Natalia Kruszynska 氏が開発したものを (多少 の不具合修正を加えて) 使用し、HSM 制御は、これを使った従属 的なデバイスドライバによって行われ、割り込みもこの中で処理 されます (丁度 PCMCIA カードのドライバが pcmcia-cs コアド ライバを呼び出すのに相当しています)。 現在の使用環境をまとめると以下の通りです。 ベース Vine-2.1 (RedHat-6.2) kernel 2.2.17 cc egcs-1.1.2 (gcc-2.91.66) libc glibc-2.1.3 tcl/tk 8.0.5 jp-9 BLT 2.4u ImageMagick 5.1.1 Vine-2.1 に含まれないもの (BLT-2.4u, パッチを当てた tk-8.0) は、RPM 化してものを下記のアーカイブと一緒に置いています。 PCI-VME 間の標準ケーブルは、617 の場合 8 または 25 フィート ですが、別売の光ケーブルトランスミッターを使って 2 km まで 延長可能です。618 は直接光ケーブルで接続するのでトータルの 価格は割安となりますが、ケーブル長の上限は 500 m です。重要 な注意として、両者の光ケーブルコネクタは互換性が有りません。 光ケーブルシステムを含む、上記システムの価格・納期について 興味の有る方は、doc/fax/ 以下に SMART で購入した時の見積りの G3 ファックスファイルを置いていますので、参考にしてください。 転送速度は、二芯式光ケーブルの場合、最大 15 MB/sec となって おり、実際 DMA 転送に関しては 100 m の光ケーブルを通しても (HSM に対し) 7.4 MB/sec が変り無く得られる事が確認されてい ます。ただし PIO 転送 (スケーラの読み出しに使用) は 1 アク ション毎にハンドシェイクする為、速度の低減は著しく、25 feet 標準ケーブルで 1.5 MB/sec の所が 100 m 光ケーブルを通すと 670 kB/sec にまで落ち込んでしまいます。618 の光ケーブルは 二芯式ですが、DMA 転送速度のカタログスペックは 35 MB/sec と 何故か大きな値になっています (未確認)。 ・ファイル・ディレクトリ構成 - README このファイル - configure - Makefile - doc/ 使用法の解説と各種マニュアル等 - bin/ 実行形式 (Tcl スクリプトを含む) の置場 - src/ (大部分の) ソースの置場 - example/ ユーザーが用意すべき解析ルーチンの例題 - vmehb/ Bit3 617/618 VME/PCI インターフェース用 デバイスドライバのソース - hsm8170/ CES HSM-8170 制御用デバイスドライバのソ ース (vmehb の従属ドライバ) - camac/ CAMAC 制御の為のデバイスドライバのソース 実際には使用するクレートコントローラに応 じて以下のいずれかへのシンボリックリンク - cc7x00/ 東陽 CC/7000, CC7700-ISA/PCI - k2915/ Kinetics 3922/2915-PCI - k2917/ Kinetics 3922/2917-VME - include/ 各種設定を含むインクルードファイルの置場 - lib/ 各種ライブラリの置場 - tcl/ Tcl スクリプトライブラリの置き場 - app-defaults/ X (Tk) のリソース設定のデフォルト (ものに よってはプログラムの基本動作を規定している) - bitmaps/ X (Tk) アプリケーションで使うビットマップ これらのファイルは、アーカイブ mars2-online.tar.gz オンライン使用に必要な全てのファイル mars2-offline.tar.gz オフライン使用に必要な最低限のファイル mars2-docs.tar.gz 各種マニュアル・詳細情報 ( > 4 MB) から展開できます。また、各々のアーカイブは、この (README の 有る) ディレクトリで % make dist.online % make dist.offline % make dist.docs を実行する事によって作成されます。配布元は現在の所 ftp://iris.riken.go.jp/pub/mars/ となっています。 オンラインの使用に際しては、doc/INSTALL → doc/USAGE → doc/APPENDIX の順に各文書を、また必要ならば doc/FAQ をお読み ください。オフライン解析部分のみ使用する場合は、doc/USAGE の analyzer の個所および doc/APPENDIX の bin/mtcopy 以降を読む だけで充分と思います。 --------- 岡村 弘之 Email: okamura@phy.saitama-u.ac.jp 埼玉大学理学部物理 Tel&Fax: 048-858-3375